Yhtehsulavundu(ユフテフスラヴンドゥ)ー ひとつに融け合う】

カレリアの土、想像の翼

カレリア人は、現在のフィンランドとロシアの国境の両側にまたがる土地を故郷とする民族です。第二次世界大戦中にフィンランドがカレリアを割譲したとき、何十万もの人々が西へと避難しました。私の家族、そして私の師匠ユリアもそのなかにいました。

Yhtehsulavundu は、自分自身の手と、自分の根へと還る道を見つけるための試みとして始まりました。ここにあるすべての文様は、自らの世界を布に縫い込んできた幾世代もの先祖たちから受け継がれた、カレリアの染織の伝統から生まれています。

本展の中心となるのは、誕生から死に至るまで人生のあらゆる節目において多くのカレリアの人々にとって欠かせない存在であった、長い儀礼用の布「käzipaikku(カジパイック)」です。私は、私の家族の親しい友人でもあった師匠ユリア・サルミネンのもとでkäzipaikkuの作り方を学びました。彼女は、現在のフィンランド国境の向こう側にある、私の祖母の生まれ故郷のマンチンスアリ島から避難してきたカレリア人でした。彼女は2026年5月、本展の開幕の一か月前に92歳で亡くなりました。

本展には、同じくマンチンスアリ島出身である私の祖先フェオドシア・イッモネンが二百年前につくったkäzipaikkuの文様が収められています。その文様と向き合うことは、場所と時間を越える視覚言語を用いて、祖先と共同で制作することでもあります。これからの展覧会でも、その文様を広げつづけていくつもりです。

私はkäzipaikkuの最も古い技法、ダブルランニングステッチ(ホルバインステッチ、フィンランド語では etupistokirjonta)を用いています。リネンの布の表と裏に同一の文様が現れる、両面仕上げの技法です。カレリアの伝統にならい、私は身近な大切な人たちのために käzipaikkuを贈っています。

Käzipaikkuの時を超えた文様のなかには、人と自然との融合を見ることができます。人間的なもの、植物的なもの、神的なものが、ひとつの文様のうちに同時に現れるのです。馬と乗り手はひとつになって滑るように進みます。鳥と馬もまた、ひとつの同じものでありうる。そこでは、強さと自由が融け合っています。

手、顔料、声

私は絵画、陶芸、テキスタイル、アニメーション、インタラクティブ・プロジェクション、ホログラフィー等さまざまな制作技法を用いて制作を行っています。絵具とインクは、保存性が高く人体や環境への負荷の少ない自然素材を用いて、自ら作っています。それぞれのつくり方が異なる眺めをひらき、それらが合わさってひとつの対話になります。

水彩絵具は自作で、アラビアゴム、グリセリン、クローブオイル、ときには蜂蜜を混ぜてつくります。文様はデジタルで造形することも多く、それをレーザーカットや3Dプリントして、伝統的な画材と組み合わせて用います。油絵具は、安全で持続可能な顔料とクルミ油を混ぜてつくっています。

デジタル作品では、手ざわりが感じられるよう、ほとんど触れられそうな質感をもつブラシとテクスチャを用いています。

展示空間では、私がカレリア語を話す声を聞くことができます。カレリア語は私の祖母の母語でありますが、私の家族のなかで受け継がれることが途絶えてしまった言語です。カレリア語はフィンランド語に最も近い言語であり、現言、語在消滅の危機に瀕しています。

Hands, pigment, voice

I work in painting, ceramics, textile, animation, interactive projection, and holography. I make my own paints and inks from natural, archival, non-toxic materials. Each way of making opens a different view, and together they become one conversation.

My watercolours are my own, mixed from gum arabic, glycerin, clove oil, and sometimes honey. I often model patterns digitally, and laser cut or 3D print them for use with traditional media. I mix my oil paints using safe and sustainable pigments and walnut oil.

My digital art uses brushes and textures designed to feel tactile, almost touchable.

In the exhibition space, you can hear me speaking in Karelian, my grandmother’s mother tongue that got cut off in my family. It is its own language, the closest living relative of Finnish, and critically endangered.

käzipaikku を教えてくれる師匠ユリア・サルミネン
娘の手を握る師匠ユリア
娘が眠るあいだに裁縫する
私の手、祖先の文様

自分の形を失わずに、属すること

本展「Yhtehsulavundu」 は、ふだん私たちが分けて考えているものの境界が溶けはじめるとき、何が起こるのかをめぐる展覧会です。人と動物、自分と祖先、身体と象徴、見えるものと見えないもの。カレリアの文化になじみのない方にも、ここで扱われている主題が普遍的なものであるため、この展覧会はまっすぐに語りかけることができます。アイデンティティも、記憶も、帰属も、決して固定されたものではなく、融け合いつづける生きた過程です。ある世代の手から次の世代の手へと何かが受け渡されるとき、それは形を変えながらも、その意味を失うことはありません。この展覧会は、固定されたアイデンティティを主張するものではありません。むしろ帰属について別の考え方を差し出すものです。自分自身の形が消えてしまうことなく、何かの一部でいられるという考え方を。

新作

この二点はギャラリーベッケルでは展示されず、その後のグループ展で発表されたものです。作品は今後も進化をし、これから向かう先を指し示しています。

Kukkilinnut puutarhassa I(庭の愛しき鳥たち I)
施釉陶器 · 2026年 · 23×25cm
Tree of Light(光の樹)· 7.9インチ ライトフィールドディスプレイによるアニメーション・ホログラム · 2026年